2008年06月30日
王者の死角を探る–アマゾンで高額な商品買えますか?
奥井 夏子
インフォメーションアーキテクト
世界を代表するECサイトAmazon.com。その日本版であるAmazon.co.jpは、サクセスマーケティング「ビジネスチャンス」 2008年5月号によれば、2007年度の国内におけるネットショップ売上高ランキングで1位を獲得したとのこと。4月より新しいサイトデザインの公開を始めるなど、ユーザビリティ向上への取り組みにも積極的です。
ECサイトのロールモデル的存在であるAmazon.co.jpを、はたしてユーザーはどのように使っているのでしょうか?今回は、5人の被験者(20代~30代、男女混合)に、本と電化製品(Amazon.co.jp内では「エレクトロニクス」)の2つのカテゴリーから自由に買い物をしてもらいました。ユーザーの視線と行動から、Amazon.co.jpの真のユーザー評価を探ります。
リコメンドされた商品を買いますか?
まずは被験者5人に、本またはCDを見に行ってもらいました。「本はよくAmazon.comで購入している」という被験者も多く、どの被験者も迷いなく好きな商品を閲覧していました。「リストマニアはたまに見る」「ランキングもあれば見る」「表紙を見て買うこともある」などのコメントが聞かれ、数ある要素の中から自分の買い物スタイルに合った機能をうまく選択して使っているようです。
本の購入において、5人中5人が注視していた部分。それは「この商品を買った人はこんな商品も買っています」や「あわせて買いたい」などのレコメンド商品の写真でした。ただし「本やCDはまだしも、金額が高い商品では、薦められたからといって買うことはない」というコメントも聞かれました。
店頭でできることがウェブ上でもできる
本の購入では、「中古商品を見る」をクリックする被験者も数人いました(ちなみにエレクトロニクス商品の閲覧にてクリックした被験者はゼロ)。これは、「本を中古で買う」という習慣がネットショッピングでも踏襲されているからでしょう。こう考えると、商品を購入する際店頭でする行為をウェブ上でも可能にする機能を追加することが、ECサイトでは重要と言えそうです。例えば
1.CDは中古でも買う→中古品の案内
2.本は表紙に惹かれて買う→表紙写真の拡大機能
3.洋服は素材の質感、洗濯方法などディテールまでよく見てから買う→詳細写真や情報の提示
などが挙げられます。
並び替え機能に不満
次に「エレクトロニクス」のカテゴリーにて買い物をしてもらいました。被験者Bは、エレクトロニクスのカテゴリーより「IXY」(キャノンのデジタルカメラ)と検索窓に入力をしました。多数の商品が出てきたため、価格の安い順で並び替えを試みましたが、ケースやストラップなどの付属商品が並んでしまい、結局欲しいカメラを探し出すことができませんでした。
テスト中5人中5人が「検索→並び替え」という行動を取りましたが、被験者B同様並び替え機能に不満を覚える被験者が多く見られました。ロングテール提唱者のChris Anderson氏が、Amazon.comのFindability(欲しい商品をうまく見つけられるようになっているか)について問題を指摘していますが、まさにこの課題点が露呈する結果となりました。
動画:Amazon.co.jpと価格.comの両方を閲覧する被験者(クリックすると再生します)
価格.comで被験者たちがよく見ていた要素は、口コミ。その理由は、「高額商品だからこそ買う前は質問したいし、高額商品だからこそ買った後は報告(自慢)したい」とのこと。「レビューにしても、スペックにしても、Amazonは情報が少なすぎる。本はよく買っているけれど、カメラのような高額商品をAmazonで買おうとは思わない。」とコメントするユーザーも数人いました。
アマゾンに不満を感じる「比較できない」
以下、5人の被験者のコメントをまとめました。
本やCDは普段からAmazonで購入している被験者もおり、これら商品カテゴリーではそれほど不満点は挙がりませんでした。ただカメラやPCなど高額な商品の購入において、ユーザーは本やCDよりもずっと慎重になります。価格、評判、スペックなど、さまざまな角度から複数社の商品を比較検討するには、 Amazonの情報量はユーザーにとって不十分なようです。
比較、検討、共有できないサイトで高額商品は売れない
インターネットが普及したことで、消費者の購買行動が「AIDMA(Attention:注意、Interest:興味、Desire:欲求、 Memory:記憶、Action:行動)」から「AISCEAS(Attention、Interest、Search:検索、Compare:比較、 Examination:調査検討、Action、Share:情報共有)」へと進化したとはよく言われることです。
今回のテストで、ユーザーは商品が高額になればなるほど、「AISCEAS」における「Compare(比較)」「Examination(調査検討)」「Share(情報共有/感想をネットで公開)」をサイトに求めているということが分かりました。比較、検討、共有のために外部サイトへ移っていくユーザーをサイト内にいかに留まらせるか――Amazonの課題はここにあるのかもしれません。
高額商品ほど「Compare(比較)」「Examination(調査検討)」
「Share(情報共有/感想をネットで公開)」が重要に
本コラムは、奥井がCNET Japanにて連載している「視線が明かすウェブ制作の常識・非常識」にて2008年5月30日掲載された原稿です。
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